日々思うことをつらつらと


by joe-suzuki

この写真、誰が撮ったかご存知ですか

有名なアイリーン・グレイのポートレート。撮られたのは彼女が48歳の時。
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撮影したのは、女性写真家ベレニス・アボットである。彼女のことをちょっと紹介しようと思う。

1898年にアメリカで生まれたアボットは、彫刻を学ぶため1921年、パリの彫刻家エミール・アントワーヌ・ブールデルのもとを訪れ、創作活動を開始する。この時、名前をフランス風の「ベレニス」に変えている。

1923年、マン・レイが写真スタジオのアシスタントとして、写真を全く知らない人物を募集。マン・レイもアボットもアメリカ人ということもあったのか、彼女は暗室作業を手伝う事になる。その2年後アジェの写真を初めて目にし、写真の表現手法に衝撃を受けた彼女は、以後写真をライフワークとする。

1926年、自身のスタジオをパリのリュードバックに開設。短期間ベルリンで写真を学び、27年にはリュクサンブール公園のすぐ北にスタジオを再オープンさせている。

当時のパリ左岸は、名だたる文化人が活動しており、アボットは彼らのポートレートを1929年まで撮影した。アイリーン・グレイのポートレイトは、1926年に撮られている。。

著名な編集者であるシルヴィア・ビーチは『シェイクスピア・アンド・カンパニー』の中で、当時のアボットの事を、マン・レイとともに「民衆の公式肖像写真家、マン・レイやベレニス・アボットがとるということは、撮られる人物が社会的に何者であるかを意味している」と書いている。彼女はそれだけ文化人の間で有名な存在だったのであろう。

1926年、グレイは画廊で開かれたアボットの個展を訪れている。展示には、初期の代表作である、ジェイムス・ジョイス、アンドレ・ジッド、ジャン・コクトーマリー・ローランサンのポートレートがあったという。その後ほどなく、アボットがグレイの写真を撮ったと記録に残っている。

それにしても1878年生まれのアイリーン・グレイの美しいこと。計算すると48歳だ。良家の出身で、サマーセット・モームの小説にも登場する美貌の持ち主だったグレイは、多くの写真を焼き捨てているので、アボットの撮った写真は極めて貴重なものだ。

さて、その後ベレニス・アボットはニューヨークに戻り、アジェのように都市を切り取った写真で大きな評価を得る。また、アジェの写真をまとめて買い取り、MoMAに買い取らせた事を大きく評価する人もいる。ともあれ、歴史に名を残す写真家となった。

だがポートレートを撮る僕は、ベレニスのちょっと懐かしいスタイルの人物写真に惹かれるのである。人物の持つ魅力をシンプルに伝えているからだ。アイリーン・グレイの写真は、そんな一枚ではないだろうか。



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by joe-suzuki | 2013-07-07 18:56 | 写真・カメラ